最終更新日 2005年09月19日

「絵ものがたり散歩道」B

「あのこえ」

絵と文  大嶽 隆

5月25日から6月24日

 
 

「ピピリン

 ポッビリリン

  ポッビリリン ・・・」

  森の中から

  あの声が 聞こえてくる。

 
 

 サクラのさく 公園で、

 はじめて耳にした あのときから、

 ぼくは ずっと 気になっていた。

 しずくを ころがすような

 この うつくしい声のぬしは

 いったい どんな いきものなんだ。

 

 
 

 
 

きょうは ハイキング。

わかばが キラキラ

めに とびこんでくるみたい。

あるくのは たのしいけれど、

なんだか、

さきにすすむのが もったいない。

 

このひが

たのしみで、

たのしみで、

ゆうべは なかなか ねつけなかった。

でも、ちっとも ねむくない。

 
 

 
 

 
 

「ピピリン ポッピリリン

ポッピリリン ポッピリリン ・・・」

あっ ! あのこえ。

まちがいない。

このまえ こうえんできこえた

あのこえだ。

 

あれは たしか 4がつ。

みんなは サクラを みてたけど、

ぼくは そのむこうを

むちゅうで さがした。 でも、

とうとう こえのぬしは

つきとめられなかった。

 
 

 
 

 
 

こんどこそ みたい !

ぜったい みたい !  どこだ ?

「ピピリン ポッピリリン ポッピリリン

ポッピリリン ・・・」 どこだ !

たのむ なきやまないで。

ぼくは はしった。

 
 

「ピピリン

 ポッピリリン

  ポッピリリン ポッピリリン ・・・」

あっちだ !

 かみさま

  どうか あわせてください。

 
 

 
 

 
 

「ピピリン ポッピリリン ポッピリリン

ポッピリリン ・・・」 ちかいぞ。

ぼくは、 はずむいきを ひっしでこらえ、

あたりを みまわした。

 みえない。

  どこなんだ。

 
 

「ピピリン ・・・」 みみを すませて

はっぱ いちまい いちまいと にらめっこ。

だんだん きもちが おちついて、

じぶんも はっぱになった

みたいなきがした・・・・そのとき

きいろい かげが ! !

 
 

 
 

 
 

ひらりと めのまえに  とまった !

キビタキだ ! ! !

ずかんに のってた キビタキだ !

ほんとうに いるんだ

こんな トリ。

 
 

それから 30ぷん ?

いや、 30びょうの

ことだったのかもしれない。

きがつけば もういっぴき、

めや くちばしが そっくりの

ちゃいろいトリが きていて、、、

 
 

 
 

 
 

2ひきは もりの なかに とんでいった。

ぼくの しんぞうは まだ ドキ ドキ。

ぼくは・・・ この いきものと・・・

おなじ くうきを すって・・・

いきている・・・

なんて、 しあわせ なんだろう。

 
 

キビタキは もう みえない。

でも きえたんじゃない。

この もりの どこかにいる。

とおいけど、 あの うたごえが

ぼくには はっきり きこえる。 ほら。

 「ピピリン ポッピリリン ・・・」

 
 

 
 

 

 さあ、こんどは みなさんのばんです。

 森には、 キビタキだけでなく、いろいろな いきものがいます。 ぜひ また、森にでかけて すてきな「なにか」との であいを たのしんでください。

 もしかしたら、キビタキの歌声だって聞こえてくるかもしれません。

 キビタキは、スズメより すこし小さな小鳥です。フィリピンなど、南の国で冬をこし、春さきに はるぱる海をこえて、ふるさとにもどってきます。 黄色いのはオス。そして、 この ものがたりに出てくる「茶色いトリはメスです。

 

 すがたを 見るのは むずかしいかもしれません。でも、子そだてをしている キビタキがいる森であれば、5月〜6月にかけて オスの歌声を聞くことは むずかしくないのです。

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